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エネルギー政策条例の動向

(増原直樹/環境自治体会議環境政策研究所)

地球環境問題を背景としたエネルギー政策の重要性

 21世紀に入ってから、都道府県レベルにおけるエネルギー政策条例が4つ制定・施行された。これまでの日本では、エネルギーといえば化石燃料が主体であり、それらを国外からの供給に頼っているため、国の安全保障問題として位置づけられることも多かった。しかし近年、地球温暖化対策の重要性・緊急性が高まり、温暖化の原因となる二酸化炭素削減の有力な手法として自然エネルギーや省エネルギーの積極的な導入・活用が望まれるようになっている。
 そこで、国レベルのエネルギー関連法制度に環境の視点が多少盛り込まれつつあるのに対し、都道府県レベルにおいては、地域特性に応じた自然エネルギーの導入をどうやって進めていくか、公共施設をはじめとして、事業者・住民の省エネルギー行動をどうやって促進していくか、といった政策課題に取り組む必要性が急速に増大しているのである。
 次に、これまで制定された条例を概観することでエネルギー政策条例の現状を把握し、あるべきエネルギー条例像と現状との比較を試みる。

エネルギー政策条例の現状

1.北海道「省エネルギー・新エネルギー促進条例」(2001年4月1日施行)

 北海道条例は、前文及び17条から構成され、省エネルギー促進と新エネルギー導入の基本的方針、計画策定、道が行なう対策について述べられている。前文で特徴的なことは、条例制定当時に泊原発の増設が問題になっていっため、原子力を「過渡的なエネルギー」と位置づけ、「脱原発の視点に立って」自立的な新エネルギー利用を拡大していくと宣言されていることである。
 本文では、道・事業者・道民の責務が規定されているが、それぞれ一般的な表現にとどまっており、罰則いる。とはいえ、事業者・道民はさておき、道の責務として定められている「総合的かつ計画的な施策」の策定・実施、市町村への助言、行政の率先行動は条例に位置づけられたことで義務化され、これまでの自主的な計画策定や省エネ率先行動(※注)に比べれば、規定度が高くなったといえる。
※注:現在、自治体におけるエネルギー政策としてもっとも総合的なものは、「地域新(省)エネルギービジョン」である。北海道庁においてはこれらのビジョンは策定されていないが、道内の市町村をはじめ新エネビジョンについては約600自治体が策定し、全国的にかなり浸透しているといえる。後述の北海道の行動計画はこうしたビジョンと内容が類似しているものの、ビジョンを策定(しようと)している自治体においてビジョンがエネルギー条例に位置づけられれば、現段階で何の法令にも基づかないビジョンに正統性を与えることができるといえよう。自主的な率先行動(温暖化対策推進法に基づく実行計画を除く)やISO14001に基づく環境マネジメントシステムにおける行動も法令に基づくものではないため、同様のことがいえる。
 責務の他には、道が省エネルギー促進・新エネルギー開発導入促進に関する基本的な計画を策定すること、関連産業の振興支援、国・市町村と緊密な連携の推進の規定が特徴といえないこともない。
 このように北海道条例は理念的な規定が多いとみなされるため、条例の評価を行うにあたっては、計画(2002年2月に策定された省エネルギー・新エネルギー促進行動計画)と合わせて評価することが欠かせないが、これは別稿に譲りたい。

2.宮城県「自然エネルギー等・省エネルギー促進条例」(2002年10月1日施行)

 宮城県条例は、前文及び18条から成り、議員提案でつくられたものである。これも原子力発電について問題点を指摘しているが、「脱原発」という姿勢にまでは踏み込んでいない。一方で、「エネルギー施策を国家施策の問題としてのみ捉えることなく、地域からの発想で自発的かつ積極的な取り組」むとしており、分権を強調した前文になっているといえよう。
 具体的な規定をみると、北海道条例に比較して、市町村の責務を明示していること、連携の推進相手として、国や市町村だけでなく、NPOなどの団体を挙げていること、自然エネルギー・省エネルギー促進についての基本計画をつくり、それらの進捗状況を3年ごとに調査し公表すること、エネルギー政策専任の審議会をつくること、などが特徴である。

3.岩手県「新エネルギー導入促進・省エネルギー促進条例」(2003年3月19日施行)

 岩手県条例は、前文がなく18条から構成されており、制定過程のパブリックコメントにおいて、県民や市町村から比較的多く多様な意見が提出され、それらに対する県の考え方や反映状況を公表しているが、これは当然とはいえ有意義なことである。また、内容についても他の条例と比較して、それなりの違いを出す工夫が随所に見られる。
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 例えば、精神的な理念宣言となりがちな前文を排し、条例本文の目的で「エネルギー自給率の向上」を明示していること、電気事業者に関する規定を一条設けていること、エネルギー施策と環境との調和を基本的方針としていること、施策の方向性として「県民の日常生活における公共交通機関の利用、自転車の使用等を促進し、環境の保全に配慮した地域社会の形成」や「事業者による新エネルギーの導入及び省エネルギーに関しての土地の形状の変更、工作物の新設その他これらに類する事業が環境の保全に配慮して行われるよう誘導に努める」ことを挙げたことなどである。

4.大分県「エコエネルギー導入促進条例」(2003年4月1日施行)

 大分県条例は、前文及び19条から構成され、前文では、「環境立県おおいた」の実現に向けて、「地球的な規模で考え、地域から行動」、「国際協力」、「県民、事業者、行政の共働」の視点が強調されている。
 具体的な規定をみると、前3つの条例と比較して、省エネルギーが明示されていない点が問題である。すなわち、「環境への負荷が少ないエネルギー又はエネルギーの利用形態であって、規則で定めるもの」という表現があるのみである。計画策定については、県「エコエネルギー導入促進基本計画」をつくるとされている。北海道、宮城県に比べて後発組である割には、国際協力の推進以外にこれといった特徴はみられず、県のHPによれば、「大分県で培った中小水力、地熱などのエコエネルギー技術をアジア諸国等に提供して、国境を越えた環境問題解決に貢献します」とあり、今後の展開に期待するところが大きいといえよう。
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あるべきエネルギー政策条例と現状との乖離

 まず、現状の条例をまとめると、4条例の構成はほぼ同一であることがわかる。すなわち、名称はどうあれ、持続可能な社会、ないし循環型社会の構築に向けた、自然エネルギーの重要性を前文でうたい、本文では、自然エネルギーの定義、導入のための計画策定とその基本的方針、都道府県などの責務、都道府県の施策(学習の推進や研究開発支援、市町村の支援など)が列挙されているだけである。辛うじて、宮城県条例では計画の進捗管理が盛り込まれているものの、条例の意義としては、これまでの新エネビジョンや率先実行(エコオフィス)計画など自主的(法令に基づかないという意味で)な活動を、条例に規定することで、やや意味を強めたという程度のものでしかない。
 では、どのようなエネルギー政策条例が望ましいのだろうか。もちろん市町村レベルでも取り組むべきことは多いが、ここでは、都道府県レベルに絞って述べておこう。
 第一に、計画策定について、都道府県では基本方針などの大まかな内容にとどめ、詳細な導入計画などはできるだけ市町村へ分権化していくことである。
 第二に、エネルギー政策の基本方針として、エネルギー需給のバランスを把握し、その調整、つまり多様なエネルギー供給主体の調整(エネルギー・ガヴァナンス)をできる限り自治体が中心に行なっていくことである。この前提には、エネルギー需給に関する統計を自治体が適確に把握することがあり、これは国の法律を待っているのでは遅く、条例で積極的に位置づけていくべき課題であろう。
 第三に、詳細計画は市町村に任したとしても、都道府県全体の導入目標量を定め、場合によってはそれを条例に書き込むという方法も検討されるべきである。
 第四に、具体的な自然エネルギー・省エネルギー普及の手法は多々あろうが、とりわけ財政的(助成)や経済的(課徴金や報奨金)な手法を積極的に条例へ位置づける必要がある。というのも、これまで自然・省エネルギーに関する活動は、「自主的に」、そして経済的にほとんど見返りのない「善意のみに基づく」ものだったからである。しかし、はじめに述べたような対策の重要性に鑑みれば、善意のみに基づくような脆弱な政策推進体制であってはならない。強固に、環境政策、エネルギー政策を進めていくための第一歩として、経済的なインセンティブが欠かせないのである。
 最後に、自治体行政内部の課題として、推進組織や人材育成・研修なども挙げられるが、まずは4点目までに述べた基本的な方向性を踏まえることが重要である。
2003年6月19日改訂版

[ 参照先 ]

  1. 北海道「省エネルギー・新エネルギー促進条例」(2001年4月1日施行)(URL: 本文: http://www.pref.hokkaido.jp/keizai/kz-senrg/johrei/johrei.htm)
  2. 宮城県「自然エネルギー等・省エネルギー促進条例」(2002年10月1日施行)(URL: 本文: http://www.pref.miyagi.jp/sibun/reiki_int/honbun/aa70013111.html)
  3. 岩手県「新エネルギー導入促進・省エネルギー促進条例」(2003年3月19日施行)(URL: 概要(ここから本文へとべる): http://www.pref.iwate.jp/~hp0208/enepabukome/joureigaiyou.htm)
  4. http://www.pref.iwate.jp/~hp0208/enepabukome/pabukomekekka.htm
  5. 大分県「エコエネルギー導入促進条例」(2003年4月1日施行)(URL:本文: http://www.pref.oita.jp/10650/eco/zyourei/zyourei.html)
  6. 大分県のHP(http://www.pref.oita.jp/10650/eco/)
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