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環境税関連条例の動向

(増原直樹/環境自治体会議環境政策研究所)
環境税関連条例といっても、条例論的に問題となる事項は少なく、むしろその内容が問題にされるべきであろう。そこで、本稿では環境税を経済的手法の一つとしてとらえ、それに関して、議論の背景、方向性、課題を考察し、いくつか特徴的な事例を取り上げる。

●経済的手法の一つである環境税

 経済的手法と一言でいっても、これは単なる税だけでなく、さまざまなバリエーションをもっている。一説によれば、税・課徴金、助成システム、デポジット(預り金)制、市場創出の4つに分類できる。税・課徴金には、@排出物の量や質に応じて直接排出者が払うもの、A製品価格に上乗せして払われるもの、B行政の管理コストを負担させるものなどがある。補助金の範疇には、返済不要なものをはじめ、融資や税(課徴金)の減免・免除も含まれる。また、市場創出とは、排出量取引のほか、(特にリサイクル原料市場への)市場介入、汚染者の信頼度を保険市場に対して保証する制度などである。

●環境税議論の背景とその方向

 地域レベルで経済的手法が注目され、かつ重要である理由はいくつかある。まず環境配慮の広域性・緊急性が高まっていること、そして地方分権が実施段階に移ったこと、最後にあまり意識されないことであるが、社会のあちこちで「公平原則」の要請が高まっていることが大きな3つとして考えられる。
 「気候ネットワーク」の畑直之氏によれば、地方環境税の大きな方向として、以下の2つがあるという(三井住友銀行『SAFE』31号、2001年7月、7-9ページを参照)。すなわち、現行諸税の改革の中での地方税化、地方独自の環境新税である。全国地方税としての展開も模索されている産廃税などは後者のカテゴリーに属する。前者のカテゴリーに属するものとしては、道路特定財源に関連する自動車諸税の地方への移管があるが、既に実施されている「自動車税のグリーン化」にせよ、小泉首相が唱えていた道路特定財源の見直しにせよ、地方への移管という議論にはまだ踏み込んでないといえる。

●環境税をはじめとする経済的手法の課題

 経済的手法の論点をいくつか挙げておこう。
 第一に、従来の負担との関係である。つまり、従来の税によって賄われていた(住民・事業者にとっての受益)サービスとの整合性である。この論点は、廃棄物の有料化に際して、顕著にあらわれる。このことに関連して、最終的な負担者が誰になるかに注意する必要がある。例えば、製造業への課税は、まわりまわって製品価格に上乗せされ、消費者が負担することにもなる。
 第二に、経済的手法導入の際のコスト(税であれば徴税費用)と効果のバランスである。導入前の検討段階では研究コストがかかり、導入時には当然さまざまなシステム変更費用、導入後には測定・監視のためのコストも生じる。また、自治体や国にとっての効果は、直接的な収入源としての効果と波及効果の2種類あるが、経済的手法の中で税を採用した場合、税としては例外的に「税収減が望ましい」ことにも注意する必要がある。とはいっても、税収がゼロになることはほとんど考えられない。なお、研究コストは、隣接自治体などで共同して研究会を設置することによって、多少減らすことも可能である。
 第三に、測定・監視コストだけにとどまらない問題として、排出物等の測定、監視の信頼性を誰が保証するか、という点である。
 第四に、もっとも重要なことと思われるが、経済的手法を含めた複合的手法(ポリシー・ミックス)が考えられているかどうか、である。つまり、税や排出量取引などの手法を単独で導入することだけを想定していないか、を問う必要がある。税についてであれば、税収を環境配慮技術の開発にあてる(二重の配当論)。排出量取引についてであれば、ISO14001などに基づく外部監査によって排出量測定の信頼性が高いと考えられる場合、初期の排出量配分を多少増やすといった優遇策を講じるなど、常に複合的手法が考えられなければ、導入の効果が限定されてしまうといえよう。

●特徴的な事例の検討

 上記のような課題を踏まえ、いくつかの特徴的な条例制定・実施過程について概観してみよう。産業廃棄物(持ち込み)税については多くの県が導入済、検討中であるため、既に課税されている法定外税のうち、多治見市の一般廃棄物埋め立て税条例と高知県の森林環境税関連条例を取り上げる。

@岐阜県多治見市の一般廃棄物埋め立て税条例

参照先1
 多治見市の一般廃棄物埋め立て税条例は、2001年12月に市議会で可決され、翌年3月総務大臣の同意を得て、同4月から施行されている。この条例の特徴は、市外から搬入されて市内に埋め立てられる一般廃棄物の量に応じて、その搬入者へ課税することである。実際には、多治見市の愛岐処分場へ一廃を持ち込んでいる名古屋市に課税する制度となっている。
 愛岐処分場は名古屋市が建設したもので、名古屋市だけでなく多治見市の一般廃棄物が埋め立てられている。多治見市では97年に自前の処分場建設を計画したが、挫折した経緯があり、名古屋市では藤前干潟を埋め立てる計画が98年に中止され、両市はごみ減量に徹底的に取り組まざるを得なくなった。
 2000年には名古屋市が処分場の延命策を提案し、その提案について多治見市が専門家及び市民などによる委員会で議論した結果、安全対策の徹底や監視システム整備と並んで、名古屋市のごみ減量努力を多治見市が経済的に評価するしくみとして考案されたのがこの一廃埋立税なのである。税額は一般廃棄物の重量1トンあたり500円だが、前年度の埋立量合計が10万トンを超えた場合には1トンあたり750円になる。2002年度から課税されている。

A高知県の森林環境税関連条例

参照先2
 高知県の橋本大二郎知事が2003年2月18日に発表した「森林環境税」条例案は、県内の森林保全を目的とした都道府県初の独自課税である。これまで、三重県などで実現された「産業廃棄物税」をはじめとする環境目的の独自課税は、2000年4月の地方分権一括法施行に伴って創設された「法定外目的税」が多かったが、高知県の森林環境税は「県民税」への上乗せ徴収であることも大きな特徴である。
 条例案は「高知県税条例の一部を改正する条例案」と「高知県森林環境保全基金条例案」の2つから成り、2月24日に県議会2月定例会へ提案され、定例会会期中に可決された。法定外目的税とは異なり、国との協議は不要であるため、4月から施行され、6月から徴収されている。
 森林環境税として個人・法人の両県民税に年間一律500円が上乗せされ、約1億4000万円の税収が見込まれる。この上乗せ分に相当する額を「森林環境保全基金」としてプールし、「水源のかん養をはじめ山地災害の防止、気候の緩和、生態系の多様性確保等県民のだれもが享受している森林の公益的機能の低下を予防し、県民の理解と協力のもと、森林環境の保全に取り組むため」に利用されることになる。
 この森林保全のための新税を導入する背景としては、高知県の森林面積が84%と、全国一であることも大きく影響している。他の地域と同様に、林業で生計を立てる人が減ったり、高齢化したり、と間伐などの手入れが行き届かない人工林が増えているという。2002年度、県は間伐推進対策本部を設けて、森林整備に約20億円を使った。さらに、高知県がこの税のねらいとして考えていることは、「県民参加による森林保全」であるとされている。また、「地域の実態に即した政策実現」を通じて、全国に向けて情報発信したいというねらいを持っている。
 こうした目的とは別に、どの都道府県でも直面している税収不足も新税導入理由の一つであろう。2002年の県税収入は、不況の影響などで前年より大幅に減って589億円になりそうだという。2003年度もさらに17億円の減収が見込まれるということで、県はこの新しい財源に期待を寄せているようだ。
参照先3-16
2003年7月25日

[ 参照先 ]

  1. 多治見市一般廃棄物埋立税条例(http://www.city.tajimi.gifu.jp/d1w_reiki/bunya_001006003.html
    キャッシュ(2003.07.25アクセス)
  2. 高知県税条例の一部を改正する条例議案/高知県森林環境保全基金条例議案(http://www.pref.kochi.jp/ken/etc/sinzei/jyorei.htm
    キャッシュ(2003.07.25アクセス)
  3. 青森県産業廃棄物税条例(http://www.pref.aomori.jp/zeimu/p09/jyorei.htm
    キャッシュ(2003.07.25アクセス)
  4. 岩手県産業廃棄物税条例(http://www.pref.iwate.jp/~hp0103/houki/d1w_reiki/bunya_005001002.html
    キャッシュ(2003.07.25アクセス)
  5. 秋田県産業廃棄物税条例(http://www.pref.akita.jp/kaikaku/reiki_int/honbun/au60010811.html
    キャッシュ(2003.07.25アクセス)
  6. 三重県産業廃棄物税条例(http://www.pref.mie.jp/ZEIMU/hp/sanzei/sanzei.htm
    キャッシュ(2003.07.25アクセス)
  7. 滋賀県廃棄物税条例(http://www.pref.shiga.jp/jourei/reisys/honbun/ak00112161.html
    キャッシュ(2003.07.25アクセス)
  8. 岡山県産業廃棄物処理税条例(http://reiki.pref.okayama.jp/reiki/reiki.html
    キャッシュ(2003.07.25アクセス)
  9. 鳥取県産業廃棄物処理税条例(http://www.pref.tottori.jp/soumubu/zeimuka/i-waste00.htm)
    キャッシュ(2003.07.25アクセス)
  10. 広島県産業廃棄物埋立税条例(http://www.pref.hiroshima.jp/soumu/bunsyo/kenhouki/honbun/ar20012051.html
    キャッシュ(2003.07.25アクセス)
  11. すぎなみ環境目的税条例(http://www2.city.suginami.tokyo.jp/library2/honbun/ag11606101.html
    キャッシュ(2003.07.25アクセス)
  12. 柏崎市使用済核燃料税条例 (柏崎市のサイトには未収録)
  13. 北九州市環境未来税 (http://www.city.kitakyushu.jp/~k1702010/kankyoumiraizei/jyourei.html
    キャッシュ(2003.07.25アクセス)
  14. 太宰府市歴史と文化の環境税条例(http://www.city.dazaifu.fukuoka.jp/zeimu_s/zeijyou.asp
    キャッシュ(2003.07.25アクセス)
  15. 川内市使用済核燃料税条例(川内市サイトには未収録)
  16. 河口湖町遊漁税条例(http://www.town.kawaguchiko.yamanashi.jp/kawaguchiko/town/ka_data_info.asp?ka_id=7&dt_id=91&emp_id=)
    キャッシュ(2003.07.25アクセス)
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