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自治基本条例について

(金子匡良/市民立法機構)

1 自治基本条例とは

・自治基本条例とは、自治体運営の基本理念・基本原則、住民の権利、市長・職員の責務、議会の責務、住民参加の方法などを盛り込んだ「自治体の憲法」を指す。
 
・現在、「自治基本条例」という名称がついているものは、杉並区自治基本条例のみ。その他、「まちづくり基本条例」、「まちづくり理念条例」などの名称があるが、その中には単なる“理念条例”も多い。
・自治基本条例は、アメリカの自治憲章(home rule charter)をモデルとする。


2 自治基本条例の必要性が叫ばれている背景

 (1) 地方分権改革

◇地方分権改革・分権一括法の制定
    ↓
◇自治事務の拡大・条例制定権の拡大・機関委任事務の廃止
    ↓
◇「下請けとしての地方自治」から「住民のための地方自治」への転換
    ↓
◇自治の基本理念・基本原則を明文化する必要性 ==> 自治基本条例

(2) 住民参加意識の高まり

◇住民参加意識の高まり
    ↓
◇情報公開・パブリックコメント・住民投票など住民参加の活発化
    ↓
◇地方行政への住民参加の方法を明文化する必要性 ==> 自治基本条例

 (3) 第二の「地方の時代」

◇リーダーシップのある無党派首長の誕生
    ↓
◇個性的なまちづくりの推進
    ↓
◇まちづくりの理念・原則を明文化する必要性 ==> 自治基本条例

 (4) 集権的行政の行き詰まり

◇失われた10年
    ↓
◇国への不信・集権的行政の行き詰まり
    ↓
◇地方自治再生への期待
    ↓
◇地方自治再生の基本指針を明文化する必要性 ==> 自治基本条例

3 自治基本条例の歴史

 (1) マッカーサー草案の中の自治憲章規定

・制憲時に示されたマッカーサー草案には自治憲章に関する規定があった。
 第87条 首都地方、市及び町の住民は、彼等の財産、事務及び政治を処理し、並びに国会の制定する法律の範囲内に於いて、彼等自身の憲章を作成する権利を奪わるること無かるべし
(The inhabitants of metropolitan areas, cities and towns shall be secure in their right to manage their property, affairs and government and to frame their own charters within such laws as the Diet may enact.)
・その後、この自治憲章制定権規定は日本政府の反対に遭い、現行の条例制定権に改められた

 (2) 幻の自治基本条例 ─ 川崎市都市憲章

・1973年に川崎市で日本初の自治憲章「川崎市都市憲章(条例)案」がつくられ、市議会に諮られたが、保守派の反対の結果、廃案となった。
第1条(平和権)わたくしたち市民は、正義と秩序を基調とする国際平和を希求し、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
第4条(市民主権)わたくしたち市民は、川崎市の主権者であり、都市づくりの主体である。(以下省略)
第5条(自治権)わたくしたち市民の自治権は、わたくしたちの基本的人権であり、かつ都市の自治権は、地方自治の本旨に基づく固有権である。
2 市民および市は、自治権を不当に侵害する行為に対して抵抗する権利を有する。
第8条(知る権利)わたくしたち市民は、川崎市の主権者として、つねに市政の実情を知る権利を有する。(以下省略)
第9条(参加する権利)わたくしたち市民は、川崎市の主権者として、市政に参加する権利を有する。
第17条(生活権)すべての市民は、住生活、勤労生活、消費生活およびレクリエーション等すべての生活の面において、人間性豊かな生活を営む権利を有する。
第22条(環境権)すべての市民は、生命・財産の安全と健康な心身を保持し、快適な生活を営むための良好な自然環境および生活環境を享受する権利を有する。
第48条(都市建設の原則)「人間都市」川崎の建設は、人間尊重と民主的平等の原則に立脚して、長期的観点から科学的・体系的な総合計画を樹立し、近隣自治体との広域協力および自治権の拡充をはかりつつ、先導的に実施していくものとする。
第58条(自治行財政権の確立)市長等は、自治行財政権を確立するため、市の行財政の状況について市民の理解を深めるとともに、市民等と一体となって、国と自治体の分担事務の明確化およびそれにともなう財源の再配分をはかるようにつとめなければならない。
 (以下省略)

 (3) 近年の動向

参照先1
参照先2
参照先3
参照先4
参照先5
参照先6
参照先7
参照先8

3 自治基本条例の具体例

(1) ニセコ町まちづくり基本条例(2000年制定・2001年施行)

・実質的な意味における最初の自治基本条例。
◆前文で、「わたしたち町民は、‥‥『住むことが誇りに思えるまち』をめざします」とまちづくりの基本理念を述べ、「まちづくりは、町民一人ひとりが自ら考え、行動することによる『自治』が基本です」として、住民自治に基づいたまちづくりを進めていくことを宣言。
◆情報の共有と住民参加をまちづくりの基本に据える。 (情報共有の原則) 第2条 まちづくりは、自らが考え行動するという自治の理念を実現するため、わたしたち町民がまちづくりに関する情報を共有することを基本に進めなければならない。 (情報への権利) 第3条 わたしたち町民は、町の仕事について必要な情報の提供を受け、自ら取得する権利を有する。 (説明責任) 第4条 町は、町の仕事の企画立案、実施及び評価のそれぞれの過程において、その経過、内容、効果及び手続を町民に明らかにし、分かりやすく説明する責務を有する。 (参加原則) 第5条 町は、町の仕事の企画立案、実施及び評価のそれぞれの過程において、町民の参加を保障する。
◆「まちづくりに参加する権利」を保障
(まちづくりに参加する権利)
第10条 わたしたち町民は、まちづくりの主体であり、まちづくりに参加する権利を有する。
   2 わたしたち町民は、それぞれの町民が、国籍、民族、年齢、性別、心身の状況、社会的又は経済的環境等の違いによりまちづくりに固有の関心、期待等を有していることに配慮し、まちづくりへの参加についてお互いが平等であることを認識しなければならない。 (満20歳未満の町民のまちづくりに参加する権利)
第11条 満20歳未満の青少年及び子どもは、それぞれの年齢にふさわしいまちづくりに参加する権利を有する。
◆「コミュニティ」に関する規定を置く。
(コミュニティ)
第14条 わたしたち町民にとって、コミュニティとは、町民一人ひとりが自ら豊かな暮らしをつくることを前提としたさまざまな生活形態を基礎に形成する多様なつながり、組織及び集団をいう。
(コミュニティにおける町民の役割)
第15条 わたしたち町民は、まちづくりの重要な担い手となりうるコミュニティの役割を認識し、そのコミュニティを守り、育てるよう努める。
◆町長・職員の責務を明記。(議会の責務には言及なし。)
(町長の責務)
第17条 町長は、町民の信託に応え、町政の代表者としてこの条例の理念を実現するため、公正かつ誠実に町政の執行に当たり、まちづくりの推進に努めなければならない。
(執行機関の責務)
第19条 町の執行機関は、その権限と責任において、公正かつ誠実に職務の執行に当たらなければならない。
   2 町職員は、まちづくりの専門スタッフとして、誠実かつ効率的に職務を執行するとともに、まちづくりにおける町民相互の連携が常に図られるよう努めなければならない。
◆町政への市民参加の原則を規定。
(審議会等への参加)
第21条 町は、審査会、審議会、調査会その他の附属機関及びこれに類するものの委員には、公募の委員を加えるよう努めなければならない。
(計画過程等への参加)
第25条 町は、町の仕事の計画、実施、評価等の各段階に町民が参加できるよう配慮する。
(条例制定等の手続)
第42条 町は、まちづくりに関する重要な条例を制定し、又は改廃しようとするときは、次のいずれかに該当する場合を除き、町民の参加を図り、又は町民に意見を求めなければならない。
◆政策評価に関する規定を置く。
(評価の実施)
第34条 町は、まちづくりの仕事の再編、活性化を図るため、まちづくりの評価を実施する。
◆住民投票制度に関する規定を置く。
(町民投票の実施)
第36条 町は、ニセコ町にかかわる重要事項について、直接、町民の意思を確認するため、町民投票の制度を設けることができる。
◆条例の「最高法規性」を規定。
(就任時の宣誓)
第18条 町長は、就任に当たっては、その地位が町民の信託によるものであることを深く認識し、日本国憲法により保障された地方自治権の一層の拡充とこの条例の理念の実現のため、公正かつ誠実に職務を執行することを宣誓しなければならない。
(この条例の位置付け)
第43条 他の条例、規則その他の規程によりまちづくりの制度を設け、又は実施しようとする場合においては、この条例に定める事項を最大限に尊重しなければならない。

4 自治基本条例に盛り込むべき事項

(1) 条例の趣旨・目的の明確化する。→ 住民自治の原則を確認する。
(2) 住民の権利(と責務)を明記する。
(3) 自治体・首長・議会・執行機関の責務を明記する。
(4) 住民参加・情報公開・透明性の確保などの原則と手続を明確化する。
(5) コンプライアンス体制(違法行為の規制、内部告発者の保護など)を確立する。
(6) 条例の最高法規性を規定する。

5 今後の課題

(1) 市民の参加の下に、地に足のついた“使える条例”にしていく。
(2) 基本条例を具体化するための条例(ex. 市民参加条例、情報公開条例など)を整備する。
(3) まちづくりのための情報提供や啓発活動を積極的に行い、市民の参加意識を向上させる。
2003年11月25日

[ 参照先 ]

  1. 大阪府箕面市「まちづくり理念条例」(URL: http://www2.city.minoh.osaka.jp/SEISAKU/rinen.htm)
    キャッシュ(2003.11.25アクセス)
  2. 北海道ニセコ町「まちづくり基本条例」(URL: http://www.town.niseko.hokkaido.jp/reiki/reiki.html)
    →(キャッシュはシステム上とれず)
  3. 北海道猿払村「まちづくり理念条例」(URL: http://www.vill.sarufutsu.hokkaido.jp/D1W_REIKI/41390101000100000000/41390101000100000000/41390101000100000000_j.html)
    キャッシュ(2003.11.25アクセス)
  4. 兵庫県宝塚市「まちづくり基本条例」(URL: http://www.city.takarazuka.hyogo.jp/sub_file/01010102000000-kihon.html)
    キャッシュ(2003.11.25アクセス)
  5. 兵庫県生野町「まちづくり基本条例」(URL: http://www6.ocn.ne.jp/~kaiwa/kihonnjyourei/honbun.htm)
    キャッシュ(2003.11.25アクセス)
  6. 東京都杉並区「自治基本条例」(URL: http://www2.city.suginami.tokyo.jp/library2/honbun/g1160627001.html)
    キャッシュ(2003.11.25アクセス)
  7. 新潟県柏崎市「市民参加のまちづくり基本条例」(URL: http://www.city.kashiwazaki.niigata.jp/html/d1w_reiki/mokuji_index.html)
    キャッシュ(2003.11.25アクセス)
  8. 埼玉県鳩山町「まちづくり基本条例」(URL: http://www.town.hatoyama.saitama.jp/kakuka/plan/kihonnjourei/index.html)
    キャッシュ(2003.11.25アクセス)
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